「けふからは日本の雁ぞ楽に寝よ」 一茶

はるか北方から海を渡ってきた雁の群れに、一茶は優しい眼差しで「お前たちは日本の雁だよ。ゆっくり休めよ」と、労いの思いを句に込めた。

 山陰地方では宍道湖や中海などに毎年、約4万羽のマガンなどのカモ類が渡来している。ゆっくりと骨休め、冬を過ごしたコハクチョウの北帰行が例年より10日余り早く2月20日から始まった。

 季語に「雁風呂」がある。

 津軽地方の伝説で雁は海を渡るとき、途中で羽を休めるための木片を咥えて飛ぶという。目的地に着くと木片を落とし、春の北帰行の際、同じ木片を拾って飛び立つが、幾つかの木片が残される。

 越冬できなかった雁の木片だ。3月になるとその木片を拾い集め、供養に風呂を沸かし、旅人に振る舞った。

 花鳥風月の趣を好む日本人は、渡り鳥の飛来や北帰行にも季節の微妙な移ろいを感じ、無常観も併せ持つ。しかし、近年は鳥インフルエンザとの関連性もあり、渡り鳥の肩身は狭い。