今年2月、子供が欲しいなって思ったら、すぐお腹に宿ってくれた小さな命。

 

妊娠検査薬に陽性反応が出た時の、あの日の自分は、世界で一番幸せ者だと

勘違いするほどの喜びようだったのを覚えてる。

 

一回目の診察で胎嚢を確認。(5w)

早すぎてまだ赤ちゃんが見れないのを分かっていながら、待ちきれず行った病院。

エコーを見て、初めて本当に妊娠したんだと少し実感した。

 

二回目の診察(7w)で、赤ちゃんの姿を確認できて、

同時に小さな心臓がピコピコしているのを見たときは、なぜだか涙が潤んだ。

 

二週間後の三回目の診察(9w)でも、元気な心拍を見せてくれた。

母子手帳をもらうように言われる。

ここにきて初めて少し一安心したのを覚えてる。

 

そして4回目の診察(11w)。血液検査やらをした後、診察台にあがりエコーを見る。

前回より少し大きくなっている形が映ると同時に、先生が口を開く前に自分で気づく。

ピコピコが見えない…。え、うそでしょ、どこ…?

それと同時に先生が口を開いた。「赤ちゃん心臓がとまっちゃってるみたい…」

頭が真っ白になった。診察台から降りる時、先生が黙って私の足をポンポンとした。

 

この時の情景は、今でも一番忘れることができない位の鮮明なつらい記憶。

 

涙はでなかった。だって信じられない。というより頭が真っ白のまま。

 

診察室に戻り、稽留流産と言われた。

これまで出血は一度もなかった。お腹も痛くなかった。

ただ、思い返せば腰痛で寝れなかった日があったことを思い出す。

大きさから言って、一週間くらい前に心臓が止まってしまっているということ。

前回の検診の少し後だということが分かる。

「泣いてもいいんだからね…」と先生が言う。

泣けなかった。

手術日を決め、待合室に戻る。

早く病院を飛び出したかった。一人になりたかった。

急に、さっきまで浮かれていた自分を恥ずかしく思った。

会計を済ませ、病院を出て、仕事中の旦那に電話する。

「ごめんね…赤ちゃんだめだった…」

この言葉を自分で口にした瞬間、我慢していた涙が溢れ出した。

人の目を気にせず道で大泣きしながら歩く。

そして嫌でも実感した。これは現実なんだと。

 

どうしてわたしが、どうして心拍確認したのに、どうしてどうしてどうして。

先生に、初期流産は染色体異常が原因だろうから、私のせいじゃないといったけど、

それでも自分を責めることばかり、次々と頭に浮かんでくる。

 

家に着くと、二匹の愛犬が何事もなかったかのように

おかえりといわんばかりに、しっぽを振る。

母に電話する。申し訳なくて仕方なかった。

私のほかにも悲しい思いをする人がいることが耐えられなかった。

 

一人呆然とリビングでボーっとしていたら、急に玄関の鍵が開く音がする。

仕事を早退して、旦那が帰ってきたらしい。

私を見つけるなり、涙を流しながら「こんな時に一人にさせてごめんな」と言った。

あぁ、私はこの人と一緒になって良かったと心底思った。

流すだけ涙を流した後、二人で静かに過ごした。

 

最後の夜は、「お父さんになる練習をさせてくれてありがとう」と

ベッドの中で旦那がお腹を触りながら言った。旦那はこの日一番泣いていた。

もう届かない声だとしても、最後にちゃんとお別れを言ってくれた旦那に感謝した。

 

そして心の整理がつく暇もなく、手術当日を迎えることとなる。

前日から入院。ホテルのような綺麗な部屋に通され、

お尻に痛み止めの座薬を入れてもらった後、一番不安だったラミセルを

なんともなく挿入し、夕食を最後に絶食。

やっぱり夜はあまり寝れなかった。

私はこの時、やっとお腹の子にお別れを言った。もう涙はカラカラだった。

 

早朝から、手術着に着替え、点滴を始める。

私の腕は、なかなか血管がわかりずらいため、一度失敗し、二度目で針が無事入る。

その後「少し眠くなります」と点滴にもうひとつ足されると、とてつもなく眠くなった。

それと同時に旦那が到着。無理に笑顔いっぱいにして現れた。私の緊張がとける。

 

いよいよ車椅子で手術室まで行く。

手術台までは、自分で歩いた。

コンタクトをはずしたせいか、まわりが鮮明に見えないことに救われた気がする。

麻酔が入った瞬間、腕がビリビリした。

先生に「お酒は強いの?」と聞かれ「普通です」と返す。

そこから記憶はもうない。

 

うっすら声が聞こえ始める。先生に肩をポンポンされて

「だいじょうぶもう終わったからね」と言われたと思う。

「はい…」というのがまだ精一杯だった。目もまだ重くてあけれない。

少しあそこが痛む。そこからまた記憶がない。

しばらくして部屋まで運ばれている時にまた目を覚ます。

病室のベッドに寝かされ、旦那がいるのは分かるが、まだ目が重くて開けない。

二時間ほどたっただろうか。

目を覚ますと、旦那が傍にいてくれた。

ふらふら起きて、旦那が買ってきたサンドイッチと飲み物を飲む。

 

無事に終わったことに安心したからだろうか。

お腹の子をちゃんとお空にかえせただろうか。

心は意外と落ち着いていた。

テーブルには、気持ちばかりの花が届いていて、

とても綺麗だなと癒されたのを覚えている。

 

お昼に先生に診察してもらう。

最初から最後までとても優しかった先生。

冗談をよく言って笑わせてくれることが多かった先生。

「いつか」があったら、またこの人に見てもらいたいとそう思った。

 

病院をあとにし、外に出る。

昨日の強い雨風が嘘のように、空は晴れ渡り、気持ちよかった。

 

正直、これまでの私は、何事にもとても恵まれて生きてこれたと自分で思っている。

両親に何不自由なく裕福に愛されて育てられ、たくさんの友達にも恵まれ、

自由に人生を歩み、好きな仕事に就き、愛し愛される旦那と出会い、結婚した。

 

それでも幸せボケせず、毎日に感謝してきたつもりだ。

 

今回の小さな命との出会いは、とてつもない幸せから始まり、

これまでにないほどの苦しみで終わった。

だけど、失ったものは大きかったが、得たものもあったことも事実だ。

 

短い命だと知りながら、私の元に宿ってくれた我が子。

心臓まで動かして最後まで頑張ってくれたこと。

命があることは決して当たり前じゃないということ。

命はなにより尊いということ。

一緒に悲しんでくれた人がいたこと。

今生きている全ての人が、奇跡だということ。

 

そして、ここにきて生まれて初めて自分の体を大事にしようと思った。

食生活にも気をつけ、規則正しい毎日を送る努力をしたい。

 

今はまだ妊娠することがこわい。

また同じことが起こることになったら…。

その気持ちは拭えない。

だけど後ろを振り返りたくない。

何か意味があったのだと信じたい。

 

自分が苦しんでいるときって、今日一番自分が不幸だと思ってしまうもの。

でも、もっと苦しんでいる人はいる。そして戦っている人がいる。

 

いつかまた…

 

忘れないようにここに証を残します。

 

                     - 2016.4.12(Tue) -